大刀洗町

町指定文化財「ド・ロ版大版画(地獄)」

更新日:2019年12月26日

※「地獄」とは永遠に救われることのない絶望の世界を現したもの

 

この大きな版画の版木はド・ロ神父が作らせたものです。ド・ロ神父はフランス、ノルマンディ地方出身の貴族で、フランス革命の影響で没落した貴族のように、財産に頼らず知識や能力を身につけるよう、小さな頃から放牧、農耕、裁縫、医療、薬学、パン・マカロニや麺製法、印刷技術、建築学などあらゆる学問を習得し、その後宣教師になりました。

 

ド・ロ神父は禁教令時代の慶応2(1868)年6月長崎に上陸し、大浦天主堂で見つかった潜伏キリシタンのほかにも潜伏キリシタンを探し、布教するとともに、さまざまな福祉事業や印刷、建築など多くの業績が知られ、重要文化財今村天主堂を設計施工した教会建築で有名な鉄川与助にも多大な影響を与えました。

 

 

ド・ロ版木版画は全部で10種類あり、禁教令が解かれた明治8年~10年の間に版木が作成され、布教用に印刷されました。本資料はその中の1点「地獄」で当初のものと思われ、墨摺りに彩色されたものです。

 

保存状態はよいほうでしたが、永く残すため平成29・30年度の2年をかけて修復を行いました。特徴として上部の軸木が半月状になった特殊な形をしていて、表具の裏には「インヘルノ」という墨書がかかれており、また下部の軸木の中には「十八」と書かれた墨書がのこっていました。

 

現時点で印刷された版画「地獄」は、10点しかなく、そのうち彩色があるのは大刀洗町に保管されている物も含めて5点のみです。

 

明治の初め、今村の潜伏キリシタンは、長崎との交流で学んだ教えやしきたりを信徒の一人、青木才八さんの土蔵に集まってこっそり勉強していました。

禁教令が解かれると、今村に派遣された宣教師(コール師)が土蔵でミサを行っていました。その頃布教やミサの際に使用されたものと思われ、才八さんの子孫がもっていた物が最終的に教育委員会に寄贈されました。

 

数少ない貴重なものであり、大刀洗町の歴史を知る上で欠くべきことのできない資料です。

 

その希少価値から平成29年、信徒発見日の2月26日に「邪宗門一件口書帳」とともに町指定文化財になりました。

 

(状態保存のため、常設展示はしていません。)

 

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